「ラーゲリより愛を込めて」という映画は、私にとって特別な映画になりました。
正直に言って、この映画の感想を書くのはとても難しく思えました（が、頑張って書いてみます）。
それはこの映画が、私が大学生時代に何度も足を運んだロシア（映画内では、旧ソ連）を舞台とした悲しい実話を描いたものであったから。
また本当に残念なことに、この映画が上映されている現代にまた、ロシアがウクライナを軍事侵攻しているという現実があるから。
更に言うと個人的に、今は第2子出産直後のタイミングで、毎日をすくすくと生き育っていく娘を前に、
家族のありかた・生きる意味を根本から問いただすこの映画の内容に、深く考えさせられたからです。
映画「ラーゲリより愛を込めて」とは
映画「ラーゲリより愛を込めて」とは、第二次世界大戦終了後、約60万人の日本人がシベリアの強制収容所（ラーゲリ）に不当に抑留されていた事実をもとに描かれた作品です。
原作は、辺見じゅん著「収容所（ラーゲリ）から来た遺書」。
第二次大戦後の1945年。そこは零下40度の厳冬の世界・シベリア…。わずかな食料での過酷な労働が続く日々。
死に逝く者が続出する地獄の強制収容所（ラーゲリ）に、その男・山本幡男は居た。
「生きる希望を捨ててはいけません。帰国（ダモイ）の日は必ずやって来ます。」
絶望する抑留者たちに、彼は訴え続けた――
（「ラーゲリより愛を込めて」公式HP内「ストーリー」より）
キャストは主人公の山本幡男に二宮和也、その妻に北川景子、山本の周りの抑留者たちを演じるのは松坂桃李、中島健人、桐谷健太、安田顕など。
二宮和也や松坂桃李の迫真の演技が本当にすばらしかった…北川景子や中島健人もとても良い。。号泣必至ですので、手元にハンカチを準備して観に行ってみてください！
ロシア語の「лагерь（ラーゲリ）」の2つの意味
「ラーゲリ」は、ロシア語でлагерьと書きます。
- 旧ソビエト時代における「強制収容所」。
- 本来は「キャンプ」を意味するロシア語の単語。夏休みの子供キャンプ、合宿、宿泊施設も意味する。
（ウィキペディアより）
この冬日本で「『ラーゲリより愛を込めて』という映画が上映されるらしい」と初めて聞いた時、すぐに私は「ラーゲリとは、ロシア語ではないかな」と思いました。
十数年前、大学生時代にロシア語を学んでいた私。
当時留学中に、ロシアのウラジオストクという海辺の街の「ラーゲリ（=キャンプ場）」で通訳ボランティアとして、日本から来た子どもたちとの国際交流事業に参加していた夏の日の記憶がよみがえりました。
もちろん、この映画での「ラーゲリ」が意味するのは、「キャンプ場」ではなく、「強制収容所」の方なのですが…。
映画のなかで、少しの「楽しみ」として日本人抑留者たちが満面の笑みで野球をするシーンや、山本幡男が「夏には、ここはこんなに空が広いんだ」とソ連の空を仰ぎ見るシーン（ここ、本当に泣けます…）などがあります。
そういったシーンは、私の中のロシアの「ラーゲリ（キャンプ場）」での温かい思い出とどこかかぶる部分があり、個人的にたまらない気持ちになりました。
【感想】風景を、経験を、「覚えておく」ということ。
映画「ラーゲリより愛を込めて」では、目を伏せたくなるような残虐行為が何度も描かれています。
だからこそ、私にとって印象深かったのは、主人公・山本幡男が微笑みながら話す次のようなセリフでした。
「記憶。自分の頭の中で考えたことは、誰にも奪われません。」
（ラーゲリでのシーンより）
「よーく、覚えておくんだよ。こうして久しぶりに家族全員でいられること。みんなの笑顔。美味しい料理。ハルビンの午後の日差し」
（ハルビンでの結婚式シーンより）
今日という日を、全身全霊で全うしているか？もっと言えば、「記憶」しようとしているか？
私の「今日という日」。
この世のすべてのものは常に変化し、とどまりません。
だからこそ、人々は自分にとって「これぞ」と思ったシーンや知識だけを懸命に記憶し、その記憶が後々の人生で何度も自分を救ってくれるのでしょう。
今ある希望（それが例えわずかなものだったとしても）を見つめて、全うし、記憶しよう。
この映画からは、そんなメッセージを強く感じました。
どの世代のかたが観ても多くのことを感じ考えさせられる、今観るべき素晴らしい映画だと思います。
良ければ観てみてください！
