2022年10月、上映中の映画「百花(ひゃっか)」を観てきました!
キャストは菅田将暉さん、原田美枝子さん、長澤まさみさんなど。原作は川村元気さんの小説「百花」です。
この映画の感想記事は、一応ブログ内ではカテゴリー「(読んでよかった・)観てよかった」に入れますが…
正直この映画は納得できない部分もあり、観たあとに少し自分の中で消化に困る映画でした。
それでも、「人生と記憶」「人間の不完全さ・狂気さ」「許すこと」など、普通に生活しているとなかなか深く考えられないテーマについて考えられたので、観てよかったとは思います。
いや、でもなぁ…。
映画「百花」あらすじ・予告動画
映画「百花」のあらすじは、こちらです。
レコード会社に勤務する葛西泉(菅田将暉)と、ピアノ教室を営む母・百合子(原田美枝子)。
ふたりは、過去のある「事件」をきっかけに、互いの心の溝を埋められないまま過ごしてきた。
そんな中、突然、百合子が不可解な言葉を発するようになる。
「半分の花火が見たい・・・」
それは、母が息子を忘れていく日々の始まりだった。認知症と診断され、次第にピアノも弾けなくなっていく百合子。
やがて、泉の妻・香織(長澤まさみ)の名前さえ分からなくなってしまう。
皮肉なことに、百合子が記憶を失うたびに、泉は母との思い出を蘇らせていく。
そして、母子としての時間を取り戻すかのように、泉は母を支えていこうとする。だがある日、泉は百合子の部屋で一冊の「日記」を見つけてしまう。
そこに綴られていたのは、泉が知らなかった母の「秘密」。あの「事件」の真相だった。母の記憶が消えゆくなか、泉は封印された記憶に手を伸ばす。
一方、百合子は「半分の花火が見たい…」と繰り返しつぶやくようになる。「半分の花火」とはなにか?
ふたりが「半分の花火」を目にして、その「謎」が解けたとき、息子は母の本当の愛を知ることとなる――― 。(映画「百花」公式HPより引用)
映画の予告動画は、こちらです。物語の雰囲気がよくわかると思うので、ご興味のあるかたはどうぞ!
【ネタバレ】映画「百花」の良かった部分と、納得できなかった部分
映画「百花」は、映画レビューサイトなどで結構酷評を受けています(私はこういうレビューサイトで感想を読んでから、映画を観る派です。←レビューを事前に確認したいと言うよりは、感想を読むのがシンプルに楽しい)。
「つまらない」「心理描写が浅い」「共感できない」などの評価が多いです。そして鑑賞後は少なからず、私も同じような感想を持ちました。
それでもこの映画…もちろん良かった部分もたくさんあったのです。
- 菅田将暉さんの演技が素晴らしい!過去の記憶に縛られ葛藤を抱えながら生きる主人公を演じる姿が、ものすごく自然。「菅田将暉が出ている他の作品、もっと観てみたい!」と思いました。
- 原田美枝子さんの演技も本当に素晴らしい。「若い母親時代〜認知症を患うまで」の約30年を、おひとりで見事に演じています。調べてみると、原田さんは2021年にお母様(晩年は、認知症だった)を亡くされているようで。だからこそのあの演技…!と納得しました。
- 映像の美しさが印象的。記憶と現実が交差する浮遊感みたいなものを感じられて良かったです。母親と男の子の美しい思い出シーンや、阪神淡路大震災のシーンはかなりリアルで見入りました。
一方で、唯一納得できなかった部分は、やっぱり母親の過去の「事件」の部分。
母子家庭で育っていた泉(菅田将暉)が小学生のとき、母・百合子(原田美枝子)が泉を置きざりにして約1年間家を出るのです。愛する男(不倫相手)を追って…。
【考察】母親の「狂気」の部分を、どうしても理解できない
人間って皆、「不完全」なものです。
いつも明るく善良で正しくいられるわけじゃない。楽(らく)しようとすることもあるし、時に何かの歯車が狂って、タガが外れたり、とんでもない行動に出たり、ある種の病に侵されることもあるのですよね。
なので私はそういう、人の「陰」の部分だったり、「狂気」の部分をなるべく理解できる人間でいたい、とは思ってふだん生活しています(ちょっと変かな…笑)。
それでも、ですよ。
ほとんど何も入っていない冷蔵庫。わずかに残った牛乳を少量のコーンフレークにかけて、更にそこに水道水を足して、暗い部屋でひとり食べている男の子。
部屋に残っていたメモを頼りに、ついに震える声でおばあちゃんに電話をかけます。「おかあさんが、帰ってこない…」
もうあれは見ているだけで、苦しくなるシーンで。
あの母親不在の1年を、泉は自分の暗い過去として何度も思い起こしながら、大人になるわけです。
そしてその母親が認知症になったことをきっかけに、泉は母親と改めて向き合い、過去を許していく(ように見える)のですが…。
ラストの「半分の花火」のシーンは、確かに良かったです。
それでもやっぱり、泉が背負っている過去の記憶(トラウマ)があまりにも大きすぎるように思いました。
あのときさ、なんで俺を置いて行ったの?
の答えの部分を、(たとえ苦し紛れの理由であっても)描いてほしかった…!
それにしても私も、「家庭がある人を、好きになってしまった」という知り合いを過去に何人か見たことはあるので、男女の間違った愛というものはこれほどまでに(時に、子どもをネグレクトしてしまうほどに)恐ろしいものなのかもしれません。
いやぁ、でもやっぱり…あの母親の1年間の「狂気」の部分が、私には理解に苦しむのでした(そして今でも消化しきれない…)。
今回映画「百花」を観て得られた気付きを改めて挙げるならば、
- 菅田将暉さんと原田美枝子さんの演技が、とても良いものだと知れた
- 認知症の人が見ている映像というものを、いくらか知ることができた(脳の中で過去の同じシーンが繰り返されたり、人違いが多くなったり…)
- レビューで酷評されている映画は、やっぱり自分が見ても理解に苦しむ内容である(可能性が高いのかもしれない)
…という感じでした!
▼良ければこんな記事もどうぞ